1.ヒトの起源をもとめて 我々ヒトの起源はダーウィンによる進化という概念が登場して以来、150年以上にもわたって議論されてきた。ところでヒトの起源と言ってもHomo sapiensの起源を意味する場合もあれば、霊長類に遡ることもある。さらに哺乳類、脊椎動物の起源とより大きな階層を見ることもできる。そしてそれをさらに遡っていくと、われわれヒトとナメクジウオやホヤの属する脊索動物門 (註1)の共通祖先にたどりつくのである。 脊索動物にはその名の通り脊索があり、背側には中空の中枢神経である神経管が走り、鰓裂 (註2)を持つといった特徴がある(図1)。脊索は体の正中を前後軸に沿って走る支持組織で、液胞に富んだ細胞を繊維性コラーゲンの鞘(脊索鞘)が覆う構造をしている。それに加えて脊索は胚発生時にはオーガナイザー(註3)として機能し、その背側に神経管を誘導するのである。この支持組織でもありオーガナイザ