エジプトの東方砂漠に遊牧民のホシュマン族が暮らしている。8年以上続く旱魃のために遊牧生活が困難になり、ほとんどの人が砂漠の中の定住地で観光客相手の仕事に就くようになった。観光業で経済的に余裕ができたために生活の変化が幾つか生まれたが、その一つに複数の妻を持つ男性が増えたことがある。 イスラム教の聖典コーランには、男性は4人まで妻を娶って良いと記されている。ただこれには条件があり、妻達を平等に扱わなければならないことになっているが、現実にはなかなか難しいようだ。 氏族の長であるシェイク・ムサリム(75歳)には、オンム・ムライ(60歳)とオンム・ハーリッド(40歳)の二人の妻がいる。オンム・ムライと結婚したのは四○年ほど前。オンム・ハーリッドとは8年前だ。ムライは砂漠の中の定住地に、ハーリッドはナイル川沿いの町メニアに住んでいるが、シェイクはふだんほとんどメニアでハーリッドと暮らし、ムライの住