そうしてみると,あるテクストに触れ,それを引用するということの意義について考えてみたくなる。引用は,文字通り,他者を拠り所とする行為であり,引用なしに,論文を書くことなど叶わない。セルトーは,『日常生活の創出 L'invention du quotidien』の中で次のように言っている。「そんなわけで引用は信じさせるための絶対的な武器になるだろう。というのも引用は,他者が信じていると想定されるものを当て込むからであり,したがって〈現実的なもの〉が確立される手段だからである。自分が有利になるように他者を引用するということはつまり,ある特殊な場で生み出される幻影(シミユラークル)を信じられるものにするということである13)」。セルトーは,このような信じるというメカニズムの〈追放的な〉(詩的な)機能を,マラルメの未刊のテクストによって示している。それは〈考えに共鳴する〉というテーマで書かれた詩の