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朝、僕あてに一本の電話。事務パートの佐藤さんが電話をとり、風俗的な異人さんのようなビジネス口調で、カチョー、カチョーと呼ぶので、誰からの電話か尋ねると、ミヤザキさんです、という。知らない名前。個人名。セールスか借金取りに決まっている。用件だけきいておくよう指示を与えると、女性からですよ、といいやがる。みくびるな、切れ。デスクのうえで、女性からとは、しくじったか、と悔恨でぐずぐずしていると佐藤さんがメモを持ってきた。女性の名前と携帯番号が記されていた。 余談だが、電話番号を漢数字でメモしてしまうお茶目な佐藤さんは一身上の都合で金曜日に辞める。勤務日数五日間。いかん、いかん、これでは。 ミヤザキさんに電話。するとナウな感じの英語な会社名を名乗ったあとで彼女は用件を話した。<わたしたちはスカウト会社の者で、今回、クライアントさまの条件に合致したフミコさまに連絡をさせていただきました。フミコさまの
わりとクソな会社で働いているなかで、唯一やりがいのある仕事だと感じている仕事、胸を張れる仕事がお年寄りや障害をもつ方に食事を提供するビジネスで、あまり利益をもたらすビジネスではないせいか、忌々しい部長は、「あんな陰気な商売」「たいして儲からない」と、ことあるごとに文句をいっているのだけど、昨日、営業で同行した、とある施設で、お年寄り向けに食べやすく加工調理した食品を施設側の人に試食してもらう際に「こんなゲロみたいなもの、俺は食べられない」と言い放ったのには、本気で頭にきた。 それほど大きな声ではなかったが狭い部屋で試食していたのでその場に居合わせた人の耳には届いたはずだ。相手の人も、聞こえないふりをしてくれたけれど、明らかに、一瞬目を見開いていた。部長は問題のある人間だとは思っていたけれど、それは幼稚っぽさからくるもので根っこの部分は腐っていない人間だと僕はどこかで信じていたので、今回の裏
1月16日17時半。14時半から実家の書斎にとじこめられている。外出間際に物音がしたので書斎に入ったら、そのままドアが壊れて外に出られなくなった…。書斎代わりにつかっている小さな部屋でカラダが抜けられる窓はない。六畳間で南にドア(壊れてあかない)、北に窓(鉄格子があってでられない)、東が壁、西にクローゼット。 携帯は部屋の外、電源と繋がっていないノートPC(バッテリー残一時間半/無線LANでインターネット接続は可能ですが電波が微妙)、デジカメ(バッテリー微妙)、プラスドライバー、仕事で使っている部屋なので定規やペン、紙といった一式の筆記用具が手元にあります。いい脱出方法はありますか?寒い。 18時追記。パソコンから現状を家族の携帯にメール。「家族で中華街で夕食会だから帰りは早くて22時くらいになる」とのこと。近隣在住の親族は中華街で食事をしている模様。僕はどうやら家族に含まれていないようだ
こういうのを、お墨付き、っていうのか、楽観はしていたけれど、医者のことばで、問題ない、といわれると、やはり安心する。人間は安心すると、だらしなく笑うものらしい。あれこれと、よくないほうに考えるような、もう、あんな思いは二度としたくない、げらげら笑いながら、そう思った。そういえば生命保険の、保険証っていうのか、あの説明書きを初めて真剣に読んだ。受取人は、ガンなら、入院すると、なんて、早朝に布団から飛び起きて、床の冷たさに震え、新聞配達のバイクの音を聞きながら、机の引き出しをひっくり返しての慌てぶりを振り返り、げらげら笑う帰り道、コートのポケットで携帯電話がぶるぶる震えた。母だ。いざとなったら保険があるから、なんて強がりをいって、肝心な、病院にいく日時を伝えてなかったな、通話ボタンを押し、もしもし、と言うと、けふぉ、咳払いが聞こえる。また、昼スナックから酔っ払って掛けてきたのか…、あきれて、も
レントゲンで黒い影の映ってしまった肺をCTスキャンするために紹介状を持って東京の病院に行き、名前を呼ばれ、白い服をお召しになられた黒いブラジャーのおばはんのあとについて放射線を取り扱っている地下施設へ向かう際の、おばはんの台詞がまるで風俗嬢、「こういうとこ来るのはじめて?」。いやだなあ、緊張や恐怖や不安なんてないわけない、違う違う、あるわけある、おっろー日本語は難しいなあ、つってあたふたしている僕に気を留めることなく、こちらの部屋になります、という、おばはんの目は笑っていた。 で、巨大な機械が置かれた白っこい部屋に入るとメガネのオッサンから、服を脱いで…これに…着替えてください…とローテンションで言われ、渡されたのが薄手のガウンみたいな衣服。さすが東京スキャンは神奈川レントゲンと違って粋だねえ、どうだい着替えがあるよ、襟がないのが下町風ね、ってブリーフ一枚になり、その薄ガウンを着ると丈が腰
友人が離婚した。先生、小説にしてくれ、名前を出してもいい、書籍化のさいに金をくれればいい、と本人から言われているが、離婚というデリケートな話であるし、節度っつうの?このような話題で、本人を特定するような行為は暴挙であって、いくら僕がロックンロールだとしても、ためらってしまう。数少ない友人は大切にしたい。売りたくない。これが匿名の理由だ。 で、もう堪えられない、離婚だ、つって離婚する友人アライ(id:tell-a-lie)と新宿で飲むことになり(名前出してしまった!)、午後六時、アルタ前に現れた彼の姿を見て僕は驚いた。眼鏡、マスク、全身黒、伸びた髪、左右非対称の眉、うつろな目、口元からは「金…金…」。端正な青年が変態カネゴンに…。「金、本当にないんだけどいいの?」「今日はおごるよアライ君」つうわけで居酒屋。 とりあえず生ビール。「マジで離婚したの?」「マジですよ課長」。へぇネタじゃないのね。
目標視認。距離1,000。接写モードをオフ。3、2、1。パシャ。手元でシャッター音。部長、ドライバー空スイングをキャンセル。衝撃回避姿勢。即座にチャフ(口臭)散布。 部長「おい、何を撮っているんだ…」 僕 「部長のコーディネートを参考にしようと思いまして。部長はもっと真面目にご自分のファッションを主張すべきです」 部長「フムン。お前もやっとビジネスウイメン(?)としての自覚が出てきたようだな…さあもっと俺を参考にしろおおおおお!」 僕 「御意」 すごいや、部長は本当にあったんだ! 「ガイアが俺に直(チョク)に着ろと囁いている」 白タンクトップのうえにダイレクトに黒スーツ(葬式でも着られる)を重ねる部長クン(63歳/神奈川県)。 ライバルは?「シティーハンター」
最初からおかしいと思ったんだと思ったときにはたいてい手遅れなんだと思ったのは目的地に向かう車でハンドルを握りアクセルを踏み込んでいるときだったりするから人生ってやり切れないと思う。数日前。「金曜の仕事がはやく終わったら林檎狩りへ行くぞ」と部長が言った。金曜は出張。部長の旧知の取引先と打ち合わせだ。同行する理由を尋ねると、部長は「本物の営業って奴を見せてやる。お前は何もせず見ているだけでいい…」と言った。僕行く必要ないじゃん。カタカナだけでなく他人の顔色も読めない部長は「それよりも交通費がかかりすぎている。無駄はビシビシ、カットしていくぞ俺は現代のケイロオス・ゴーンだ…」と続けた。いや。だからさ。僕の出張、完璧に無駄なんだけど…という感じで五里霧中な出張が決まった。 「うおおお!」関越道を時速100キロで走る助手席で部長が叫んだ。「どうしたんですか?」「見ろ俺のケータイの電池がないぞ」「運転
月曜午後一時の僕はソバ屋で部長と酒を飲んでいた。部長は「俺の言ったとおりゴンザレスをファーストからピッチャーにコンバートしたら、みろ、20勝投手だ。俺には人を見る目がある…」なんて、どの選手を指しているのかまったくわからないジャイアンツ話を僕に浴びせながら浴びるように日本酒を飲んでいた。 部長の混濁した瞳に映る助っ人外国人選手は全員クロマティー。クルーンとオビスポとゴンザレスとラミレスを識別出来ないし、グライシンガーにいたっては「名前をど忘れした…先発の…黒人の…そうあれだグライシンガーだ…名字がグライで名前がシンガー。親は奴に歌手になってもらいたかったに違いないな…」と言う始末。そうですねぇ。なるほど。ガンダムはファーストですねえ。確かに。僕は部長の話を生返事で受け流しながら、ビールを飲み、バイトの子のたゆんたゆんなオッパイを眺めることに夢中だった。 店を出た。振り返ると部長が死んでいた
大船観音の足元にあるファミレスで宗教家ハナゲーノフ(仮名)の鼻を穴があくほど凝視していた。左側の鼻の穴からは少しだけ、右側の穴からは豪快に毛が飛び出していた。《野郎、右利きだ…》。「FBI心理分析官」をブックオフで購入熟読記憶し、《趣味》の欄に「日曜プロファイリング」と記入する資格を得た僕は、冷静に男の利き腕を見極め、ぼくたち(わたしたち)は今日旅立ちます(たびだちまーす)って小学校の卒業式、クラスの代表として呼びかけをおこなって以来の真剣さを発揮して右の耳から左の耳へ男の話を聞き流していた。 僕の心ここにあらずに気がついたハナゲーノフが言う。「話聴いてますか?」「すみません今一瞬だけ意識がGスポットにはまってました」「冗談がお好きな方だ…」。僕はマジで話を聞かずにシャロンのオッパイを想っていた。「ヘルタスケルター」を聴いて「おおこれ天啓!」と自分勝手に思い込んだ馬鹿に殺された美しき哀しき
「どうして同じコロッケ定食なのに値段が250円も違うのか(あたまの悪い)俺にわかるように説明しろ」と部長に無理難題を突き付けられました。脳みその溝が少ない部長のために簡単にざずっと考えてみたもののメモです。 ある日のことです。部長と得意先に赴いた際にそこの社員食堂で昼食をとることになりました。僕が女の子に逆ナンされていると「URYYYYYY!!」と奇っ怪な声がします。食券を買おうとした部長が券売機の前で奇声をあげていました。「どうしてここの定食はこんなに高いんだ!」。 部長が言うには別の会社の社員食堂(最寄り駅は一緒/徒歩10分)を利用したとき定食は300円。今日は550円。偶然にも同じコロッケ定食(主菜、小鉢、ライス、味噌汁)、それなのに250円の価格差があるのはおかしいというのです。 確かに近隣の二つのレストランで、同じコロッケ定食が250円差で売られていれば誰でも安いほうの店を選びま
先日この日記でお知らせしたノートはまだ見つかっておりません。生活に支障が出始めてきましたので引き続きご協力をお願いします。紛失した場所はJR横浜駅西口から少し歩いたところにあるドトールです。A4サイズの大学ノートです。表紙には「明るい人生計画12巻」という題字と女性器のシンボルマークが書いてあります。裏表紙には醤油かラー油をこぼしたシミがあります。見つけた方はメールでご連絡ください。 内容は創作・取材ノートです。仕事のメモ、小説の構想、ネタ帳、本・映画の感想、街で見かけた女性の五つ星評価(攻略法付)、エロ漫画、コード譜、抱いた女の具合ランキングなどが日付ごとに細かいフォントと流麗な文言一致体でぎっしりと書いてあります。ぼくの名前や連絡先は書いてありません。さらに一昨日気付いたのですが各種カード・サービスのパスワード、ぼく以外の実在の人物・団体の悪口が連絡先付の実名で記載されております。レシ
お見合いによるストレスで目のまわりに湿疹が出来てしまった。湿疹パンダになり下がった僕を心配したシノさんが「いい化粧水がありますうー持ってきますうー」って平野綾の声マネで叫んだので月曜の夕方に会う約束をした。シノさんは僕のお見合い相手だ。戦国時代が好き(西軍派)で趣味はコスプレとドール、カレー嫌いの25歳推定Eカップのスザンヌ似、コードネームはノッピー☆。 「オヤカタサマー!これが約束していたものですう〜」「あ〜なんか悪いっすね…今日仕事じゃないの?」。シノさんは頭に大きなリボンを付けて腰の鞄はウサギ型。抱えた楽器ケースにはドールが入っているのだろう。「仕事ですうー」「えー!その格好で?」「わたしが何の仕事をしているか興味あるみたいですねえ」「正直ありません。会話の流れとノリでえー!って叫ぶのが僕の癖なんです」 「オヤカタサマ…」「なんでしょう」「顔がボロボロでまるで…」「なんすか?」「大谷
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