今週も数多く封切られる最新映画の中から、今回は犯罪を題材にした個性的な2作品を取り上げたい。名画強盗と失われた記憶をめぐる緊迫した心理劇と、殺し屋稼業の少女2人組を描く一風変わった活劇。日常をしばし忘れ、危うくも魅力的な世界に浸ってみよう。 公開中の『トランス』(R15+)は、『スラムドッグ$ミリオネア』(08)でアカデミー賞8部門受賞のダニー・ボイル監督が、『ウォンテッド』(08)のジェームズ・マカボイ主演で描くスタイリッシュなスリラー。競売人のサイモン(マカボイ)は、ギャングと手を結んでオークション会場からゴヤの名画を盗み出す。だが、計画にない行動をとったため首謀者のフランク(バンサン・カッセル)から殴り倒され、病院で目覚めたときには絵の隠し場所を含む記憶の一部を失っていた。フランクは催眠療法士エリザベス(ロザリオ・ドーソン)を使い、サイモンの潜在意識から絵画のありかを探ろうとする。