萩原朔太郎は昭和十七年に亡くなり、その翌年から十九年にかけて、小学館から『萩原朔太郎全集』十二巻が刊行されている。 (第三巻『詩の原理』) この出版に関して、『小学館五十年史年表』(小学館社史調査委員会編輯・発行、昭和五十年)はその第三巻『詩の原理』の書影を挙げ、その内容明細もトレースしているけれど、全十巻と誤記し、十一冊までがたどられているだけだ。そうした記述や言及は大東亜戦争下の出版の事実の確認の難しさを伝えているし、それもあってこの時代における小学館版『萩原朔太郎全集』の企画や編集の実態は判明していない。『小学館の80年』(平成十六年)では言及すらもない。 それでも「同年表」からわかるのは、敗戦後の昭和二十年十月から朔太郎の『郷愁の詩人与謝蕪村』『恋愛名歌集』を始めとして、『月に吠える』などの詩集も次々に刊行され、戦時下の『萩原朔太郎全集』出版が小学館の戦後の始まりとも密接にリンクし
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