妹はモスキートだった。あまりに巨大すぎて、部屋に入らない羽は畳んで入るようだった。 口では喋らないので、羽音で挨拶するなどが得意だった。 飲水が主食であり、時折血を欲しがった。タンパク質が足りないが口癖だった。 妹は見た目が完全に虫だったので、学校では異端視された。 ストローなしでも牛乳が飲めることが特典ではあったが、牛乳から得る糖質は花の蜜ほどの効率性はないようであった。 そんな妹は時折邪神扱いを受けることがあった。奇妙な宗教家たちや、学校を住処とするオカ研の連中にである。 彼らは妹の羽音を邪悪なさえずりと言って忌避して真言を唱えるなどした。 塩水を振りかけられたこともある。いかなボウフラから生まれた妹とはいえ、塩水は堪えるようだった。 そういえば、母は妹を産んだ記憶がないという、そういえば僕たちと随分姿が違う。 ボウフラから生まれたとはいえ雌雄があってこそのものだ。なぜ母は産卵した記憶