ナチ党幹部たち。右から、ヘス、ヒムラー、ダレ、ゲーリング、レーム、ヒトラー、ゲッベルス、着席しているのがフリック ヒトラーの政権ができたのが1933年1月。この時点ではナチ党の単独政権ですらなかった。それがたった1年半のうちに、絶対的な権力を手中におさめ「総統」の座につく。この短期間で、ドイツは不可逆地点を越え、結果的にホロコーストへの第一歩を踏み出したことになる。いったい何が起きたのか? (*石田勇治『ヒトラーとナチ・ドイツ』より「第四章 ナチ体制の確立」を特別公開) ナチ体制の確立 これまで本書では、ヒトラー政権の成立(1933年1月30日)にいたる経緯と背景を検討してきた。この日から、ヒトラーが首相と大統領の地位と権限をあわせもつ絶対の「指導者」(フューラー・ウント・ライヒスカンツラー、以下、総統と記す)に就任する34年8月2日までは、振り返ると実に恐ろしい1年半だ。あれよあれよとい