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読んだに関するanmoeのブックマーク (14)

  • 芥川龍之介 結婚難並びに恋愛難

    あなたがたはゼライイドの話を知つてゐますか? ゼライイドは美しい王女です。何でも文献に徴すれば、足は蝋石の如く、腿は象牙の如く、臍は真珠貝の孕める真珠の如く、腹は雪花石膏の甕の如く、乳房は百合の花束の如く、頸(うなじ)は白鳩の如く、髪は香草の如く、目は宮殿の池の如く、鼻は城門の櫓の如くだつたと言ふのですから、万人に一人もない美人だつたのでせう。このゼライイドも年ごろになるにつけ、誰か然るべき相手を定めて結婚することになりました。これは若し日だつたとすれば、親戚とか知人とか乃至女学校の校長とか、甚だ当てにならぬ人物に媒介を頼む所だつたでせう。又西洋だつたとすれば、母親とか姉とかを参謀にし、未来の夫をつかまへる策戦計画を立てたかも知れません。しかしゼライイドは王女だつた上に大へん賢い生れつきでしたから、彼女自身の目がねにかなつた王子か宰相の子を選ぶことにしました。次に掲げる候補者表はゼライイ

  • 芥川龍之介 孔雀

    これは異「伊曾保(いそぽ)の物語」の一章である。このはまだ誰も知らない。 「或(ある)鴉(からす)おのれが人物を驕慢(けうまん)し、孔雀(くじやく)の羽根を見つけて此処かしこにまとひ、爾余(じよ)の諸鳥(しよてう)をば大きに卑(いや)しめ、わが上(うへ)はあるまじいと飛び廻れば、諸鳥安からず思ひ、『なんぢはまことの孔雀でもないに、なぜにわれらをおとしめるぞ』と、取りまはいてさんざんに打擲(ちやうちやく)したれば、羽根は抜かれ脚は折られ、なよなよとなつて息が絶えた。 「その後(のち)またまことの孔雀が来たに、諸鳥はこれも鴉ぢやと思うたれば、やはり打ちつ蹴(け)つして殺してしまうた。して諸鳥の云うたことは、『まことの孔雀にめぐり遇(あ)うたなら、如何(いか)やうな礼儀をも尽さうずるものを。さてもさても世の中には偽(に)せ孔雀ばかり多いことぢや。』 「下心(したごころ)。――天下(てんか)の

  • 芥川龍之介 「仮面」の人々

  • 泉鏡太郎 湯どうふ

  • 泉鏡花 竜潭譚

  • エドガー・アラン・ポー Edgar Allan Poe 佐々木直次郎訳 盗まれた手紙 THE PURLOINED LETTER

    盗まれた手紙 THE PURLOINED LETTER エドガー・アラン・ポー Edgar Allan Poe 佐々木直次郎訳 [#改ページ] パリで、一八――年の秋のある風の吹きすさぶ晩、暗くなって間もなく、私は友人C・オーギュスト・デュパンと一緒に、郭外(フォーブール)サン・ジェルマンのデュノー街三十三番地四階にある彼の小さな裏向きの図書室、つまり書斎で、黙想と海泡石(かいほうせき)のパイプとの二重の快楽にふけっていた。少なくとも一時間というものは、我々は深い沈黙をつづけていた。そして誰かがひょっと見たら、二人とも、部屋じゅうに濛々(もうもう)と立ちこめた煙草のけむりがくるくると渦巻くのに、すっかり心を奪われているように見えたかもしれない。しかし、私自身は、その晩の早いころ我々の話題になっていたある題目のことを、心のなかで考えていたのだった。というのは、あのモルグ街の事件と、マリー・ロ

  • 〈村上春樹 特別エッセイ〉こんなに面白い話だったんだ!(全編)|『フラニーとズーイ』J.D.サリンジャー、村上春樹 訳|新潮社

    J.D.サリンジャーは自分のの中に訳者の「まえがき」とか「あとがき」とか、そういう余分なものを入れることを固く禁じているので、そのかわりにこのような少し変わった形で、訳者からのメッセージを送らせていただくことになる。「余計なものを入れるな。読者は作品だけを読めばよろしい」というサリンジャー氏の基姿勢もそれなりに理解できるのだが、『フラニーとズーイ』という文芸作品が既に古典として機能していることを考えれば(国で出版されたのは一九六一年だ)、読者に対してある程度の基情報を提供することは、翻訳者としてのひとつの責務であると考えるからだ。だけをぽんと与えて「さあ、読めばわかるだろう」というのでは、やはりいささか不親切に過ぎるのではないか。同時代的なであればそれでもいいだろうが、古典についていえば、その立ち位置の意味合いや方向性についての最小限の説明は必要となる。そんなわけで、このに関

    〈村上春樹 特別エッセイ〉こんなに面白い話だったんだ!(全編)|『フラニーとズーイ』J.D.サリンジャー、村上春樹 訳|新潮社
  • 泉鏡花 絵本の春

    もとの邸町(やしきまち)の、荒果てた土塀が今もそのままになっている。……雪が消えて、まだ間もない、乾いたばかりの――山国で――石のごつごつした狭い小路が、霞みながら一条(ひとすじ)煙のように、ぼっと黄昏(たそが)れて行(ゆ)く。 弥生(やよい)の末から、ちっとずつの遅速はあっても、花は一時(いっとき)に咲くので、その一ならびの塀の内に、桃、紅梅、椿(つばき)も桜も、あるいは満開に、あるいは初々しい花に、色香を装っている。石垣の草には、蕗(ふき)の薹(とう)も萌(も)えていよう。特に桃の花を真先(まっさき)に挙げたのは、むかしこの一廓は桃の組といった組屋敷だった、と聞くからである。その樹の名木も、まだそっちこちに残っていて麗(うららか)に咲いたのが……こう目に見えるようで、それがまたいかにも寂しい。 二条ばかりも重(かさな)って、美しい婦(おんな)の虐(しいた)げられた――旧藩の頃にはどこで

  • 坂口安吾 お魚女史

  • 坂口安吾 阿部定さんの印象

    阿部定さんに会つた感じは、一ばん平凡な下町育ちの女といふ感じであつた。東京下町に生れ、水商売もやつてきたお定さんであるから、山の手の人や田舎育ちの人とは違つてゐるのが当然だが、東京の下町では最もあたりまへな奇も変もない女のひとで、むしろ、あんまり平凡すぎる、さういふ感じである。すこしもスレたところがない。つまり天性、人みしりせず、気立のよい、明るい人だつたのだらうと思ふ。 この春以来、私の家の女中は三度変つた。そのうち二人は東京の下町そだちで、一人は天理教、一人は向島の婆さん芸者であるが、この二人はどう見ても変質者としか思はれず、ヒネくれたところや歪んだところがあつたが、お定さんには、さういふ変質的なところが少しも感じられない。まつたく、まともな女なのである。お定さんの事件そのものが、さうなので、実際は非常にまともな事件だ。 僕がお定さんに、なんべん恋をしましたか、と云つたら、たつた一度な

  • 梶井基次郎 川端康成第四短篇集「心中」を主題とせるヴァリエイシヨン

  • 横光利一 頭ならびに腹

    真昼である。特別急行列車は満員のまま全速力で馳けてゐた。沿線の小駅は石のやうに黙殺された。 とにかく、かう云ふ現象の中で、その詰み込まれた列車の乗客中に一人の横着さうな子僧が混つてゐた。彼はいかにも一人前の顔をして一席を占めると、手拭で鉢巻をし始めた。それから、窓枠を両手で叩きながら大声で唄ひ出した。 彼は頭を振り出した。声はだんだんと大きくなつた。彼のその意気込みから察すると、恐らく目的地まで到着するその間に、自分の知つてゐる限りの唄を唄ひ尽さうとしてゐるかのやうであつた。歌は次ぎ次ぎにと彼の口から休みなく変へられていつた。やがて、周囲の人々は今は早やその傍若無人な子僧の歌を誰も相手にしなくなつて来た。さうして、車内は再びどこも退窟と眠気のために疲れていつた。 そのとき、突然列車は停車した。暫く車内の人々は黙つてゐた。と、俄に彼等は騒ぎ立つた。 「どうした!」 「何んだ!」 「何処だ!」

  • 芥川龍之介 河童

    これは或精神病院の患者、――第二十三号が誰にでもしやべる話である。彼はもう三十を越してゐるであらう。が、一見した所は如何にも若々しい狂人である。彼の半生の経験は、――いや、そんなことはどうでも善い。彼は唯ぢつと両膝をかかへ、時々窓の外へ目をやりながら、(鉄格子をはめた窓の外には枯れ葉さへ見えない樫の木が一、雪曇りの空に枝を張つてゐた。)院長のS博士や僕を相手に長々とこの話をしやべりつづけた。尤も身ぶりはしなかつた訣ではない。彼はたとへば「驚いた」と言ふ時には急に顔をのけ反(ぞ)らせたりした。…… 僕はかう云ふ彼の話を可なり正確に写したつもりである。若し又誰か僕の筆記に飽き足りない人があるとすれば、東京市外××村のS精神病院を尋ねて見るが善い。年よりも若い第二十三号はまづ丁寧に頭を下げ、蒲団のない椅子を指さすであらう。それから憂な微笑を浮かべ、静かにこの話を繰り返すであらう。最後に、――

  • 芥川龍之介 漱石山房の冬

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