「一番難しいのは『問題の本質を発見できる』ということです。それができて初めて、幹部や社員に『シンプルに』説明できたり、戦略を実行できたりします。経験を積み、過去の失敗も含めた因果律のデータベースが頭にある前提で、『この課題はあのケースに当てはまるのではないか』と、何度も試行錯誤するのです。そのプロセスは非常に手間がかかります。経営に限らず、自分がこうだと思ったことが実際は違っていた、ということは多々あるのですから」 「そこまでいくには、長い試行錯誤が必要です。私自身、プロ経営者、という言葉は標榜しないように生きてきました。自分の判断の腕が上がり、自分で『プロ』ということはなくても、いわれても否定しない、という領域に達したのは50歳代の半ばです。30歳代で米バクスター社と住友化学の合弁会社の社長になってから、20年以上の時間が必要でした」 ――20歳代にはコンサルタントとして活躍されました。