タグ

lifeに関するanuurthのブックマーク (2)

  • 正しい愛 - 傘をひらいて、空を

    抜栓する夫の手つきを彼女は好きだった。だからほほえんでそれを見ていた。彼は彼女のグラスとそれから自分のグラスの前でボトルを傾けた。ありがとうと彼女は言った。夫は上機嫌で彼女も同じくらい機嫌がよかった。それは久しぶりに彼らの双方が翌日に仕事を抱えていない夜で、彼らは順繰りに仕事の話をし、相互に感想を述べた。彼らはふたりとも、思考にいささか攻撃的なところがあり、ひどく明瞭な発音の早口で、相手の頭の回転の速さを好んでいるところがあった。 ほんとの夫婦の会話ってたぶんこういうんじゃないんだろうなと彼女は、頭の裏でぼんやりと思う。ほんとうの夫婦。正しい夫婦。そんなものは存在しないと知っているけれど、同時に彼女の頭の中にはいつだってその片割れがいる。正しい。都度の言動がほんとうはどうなされるべきだったかを、だから彼女はひとつひとつ知っている。 正解は、と彼女は思う。正解はワインを開けさせないこと。弱

    正しい愛 - 傘をひらいて、空を
  • 女に性転換した。

    最初はただの憧れだったような気もする。中学生の時にとても可愛い友達がいたのだった。絵から出てきたようなガーリーな洋服を着ていて、奔放で言いたい放題言うけれども憎まれない性格をしていて、いつも女の子のいい匂いがしていた。いつの間にか彼女に対して抱いていたその憧れは劣等感や嫉妬や憎悪や性欲やその他いろいろなものとぐちゃぐちゃに絡みついて、気がつけば自分の性自認は壊れていた。随分と前から壊れていることに気づいてはいたのだが、気づかないふりをしてずっとやり過ごしていたのだった。その性自認のねじれが自分でも制御できなくなってから、タイの病院に至るまではそうは時間がかからなかった。外見だけで言えばもう男性に間違われることもなかったし、女性としての社会生活も取り立てて問題はなかったのだけど、でもやっぱり女性ホルモンに漬かることで得たにせものの身体だけでは満足できなかったのだ。 タイに到着してから性転換

    女に性転換した。
    anuurth
    anuurth 2013/11/12
    "ここまでして、一体何を勝ち取ったのだろう?と自問することはあるのだけれど、ただそれでも今なら、死ぬまであと五十年くらい続くであろう孤独には耐えられるような気がした。" ぐっとくる文章を読めた。
  • 1