これは前回紹介したユニークな施策によってコストを徹底的に抑えてきた結果である。もちろん、コストを抑えたからといって住民サービスが低下したわけではない。 若い子育て世代が下條村に住み着いていることが如実に示しているように、住民サービスも極めて手厚い。 ムダなコストは徹底して省き、住民サービスを手厚くする。それだけではなく、万一のときに備えて貯蓄もしっかりとしておく。 「地方自治のトヨタ自動車」。そう呼んでもおかしくないのが下條村の経営なのである。それを可能にしたのが、村長である伊藤喜平さんである。 伊藤村長は1992年に誕生する。このタイミングがいまから考えると絶妙だった。20年前を少し振り返ってみよう。このときから日本はバブルが崩壊して暗くて長いトンネルに入るからだ。 1989年に破裂したバブルの後処理のために日本銀行は急激な金融引き締めに転じ、さらには当時の大蔵省(現財務省)が総量規制を