金曜19時。目黒川沿いのバーで、僕はまたもや打ちひしがれていた。 新幹線の指定席券の発売は1ヵ月前。それを忘れてのほほんとしていたら、いつの間にか、帰省用の便はほとんど売り切れているではないか。5時間以上も自由席で立っているのはつらい。なけなしの冬ボーナスがグリーン席に散ると思うと泣けてくる。 しかしそれくらいで絶望するわけではない。帰省――。久々の家族団らんにわくわくが止まらないが、兄、僕、弟の3兄弟は全員独身。何年経っても代り映えのない団らんメンバーに、両親の心労メーターは振り切れんばかりだ。 去年なぞ、兄は1年振りに遠路はるばる帰って来るなり、洋服の青山でスーツを買わされ、指定した場所に向かわされた。 まさかのサプライズお見合いである。せめて革ジャンで行くと最後まで抵抗していた兄の勇姿に感動するとともに、僕と弟は明日は我が身と恐れおののいたものだ。 順当に考えて、今年は僕の番である可