どんな達人にも無力の駆け出し時代がある。多様なキャラクターを変幻自在に演じ、三谷幸喜、是枝裕和ら人気演出家から指名を受ける女優斉藤由貴(54)にも、未熟さに悩み、泣くばかりの日々があった。ニッカンスポーツ・コムの取材に応じ、85年の映画デビュー作「雪の断章-情熱-」(相米慎二監督)の撮影当時や、風変わりだった思春期のエピソード、さらには独特の人生観も語った。全3回。【取材=松田秀彦、島根純】 ◆ ◆ ◆ 斉藤にとって女優人生の原点とも言える映画「雪の断章-情熱-」が、劇場公開から36年を経て、このほど初DVD化された。メガホンを執った相米慎二監督(享年53)は当時から、納得するまで何回でもNGを出し、内面まで追い詰める厳しい演出で知られた。多くを語らず、演技者自身が混乱しながらも、監督が求める「正解」を探していかなければならず、多くの女優が泣かされた。斉藤もその1人だった。 「撮影中に幸せ