怒りがむらむらと湧いて湧いてしょうがなくて、いちいちそれを鎮めないと次のページに進めないくらいに感情的になってしまった本が『彼女は頭が悪いから』だ。 ©犬山紙子 姫野カオルコ先生のこの小説は、2016年に起きた東大生による強制わいせつ事件がテーマになっている。この事件を聞いた時も、内容、被害者を責める声に吐き気がしたが、この小説でなぜ更に怒りが湧いたかというと、「わかる、こういうのある」と、その事件が今自分がいる現実の延長線上にあると感じてしまったからだ。小説は終盤まで普通の女の子とエリート男子の普通の日常が丁寧に描かれている。彼らの喜び、嫉妬、恋する様子は私たちが知っている青春となんら変わりないからこそ、腹がたつのだ。 彼らはレイプをしたわけじゃない。自分に恋心を抱く女性を「東大生である自分と付き合いたい下心のあるバカ」とし、ノリで彼女を裸にして叩いたり人間扱いをしなかった。裸の彼女の上