いまでこそメディアに顔を出さない人気マンガ家は少なくない。だが昔はひとたびヒット作が出れば、雑誌やテレビなどマスコミに取材で追いかけまわされ、うっかりするとクイズ番組の回答者やワイドショーのコメンテーターに……なんてこともざらであった。 いまとなっては信じられないことだが、鳥山明も『Dr.スランプ』のヒットで「徹子の部屋」に出たりしている。 そのなかにあっていしいひさいちはデビュー以来、テレビ出演はおろか顔写真すらほとんど世間にさらしていない稀有な存在である(厳密にいえば、文春漫画賞受賞直後、一回だけ週刊誌に顔写真が掲載されたことがあるのだが)。考えてみれば、20年以上も大新聞で連載を持ち、原作映画がディズニー配給により世界各国で上映されたほどのビッグネームでありながら、その顔も、私生活もほとんど知られていないというのは、ちょっとすごいことではなかろうか。ようするに私たちは、作品を通してで