2006年に出版された本書『論文捏造』の主題は、上記でも触れた、2002年に米国ベル研究所で発覚した「史上空前の論文捏造事件」である。NHKが2005年に放送した番組の書籍化であり、国内外で様々な賞を受賞したドキュメンタリーということだ。この番組を直接見る機会がなかったのだが、アメリカそしてドイツで、捏造した研究者ヤン・ヘンドリック・シェーンの素顔に迫る迫力は、この書籍からも十分に伝わってきた。 ノーベル賞に最も近いといわれていた若き天才学者がいた。3年にわたって、科学の最前線で次々と驚異的な業績をあげ、カリスマとして科学界に君臨した。ところが、彼の論文は、史上まれにみる不正によってねつ造されたものだったのである。世界中の最高の頭脳はなぜ彼の不正に気がつかなかったのか?徹底的な取材により驚くべき真実が浮かび上がってきた。 アメリカの「科学の殿堂」ベル研究所で起こったこの論文捏造は、いくつも
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