ブックマーク / odamitsuo.hatenablog.com (32)

  • 出版状況クロニクル30(2010年10月1日〜10月31日) - 出版・読書メモランダム

    出版状況クロニクル30(2010年10月1日〜10月31日) 今年は例年になく、各地に出かける機会が多かった。そして今さらながらに、21世紀に入っての巨大な郊外ショッピングセンターの出現によって、ただでさえ衰退していた地方の商店街が壊滅的な打撃を受け、ところによっては廃墟寸前にまで追いやられている姿を目撃した。 寺山修司が「書を捨てよ、町へ出よう」と言ったのは1960年代後半だった。それから半世紀近くが過ぎ、もはや捨てるべき書もなければ、出るべき町もなくなってしまった。 郊外消費社会の悲惨な状況を描いた奥田英朗の『無理』(文芸春秋)に、「こういう競争をして、いったい誰がしあわせになるのよ。わけがわかんねえ」というセリフがあった。に限って言っても、郊外ショッピングセンターの出現によって、読者も書店員も幸せになったものがいるだろうか。 1.その訪れた地方のひとつに、東北があった。 第62回書

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    asakura-t 2010/11/01
  • 出版状況クロニクル29(2010年9月1日〜9月30日) - 出版・読書メモランダム

    出版状況クロニクル29(2010年9月1日〜9月30日) 『出版状況クロニクル2』 が刊行され、3ヵ月になるが、例によって書評はひとつも出ない。再販委託制問題に加えて、クロニクルが大手新聞や総合誌などを批判していることも作用しているのだろう。 それでもこの連載を続けているのは、日の出版業界の、世界に例を見ない10年を超える深刻な危機状況に対して、私以外に誰も絶えざる警鐘を鳴らさないからである。そしてまた日出版史のみならず、戦後社会史として、出版敗戦の経緯と構造は鮮明に記録されなければならないからだ。 これまでも繰り返し言及してきたように、日の出版物販売金額は、1996年の2兆6563億円をピークに落ち続け、2010年は1兆8500億円ほどと推測できる。この10数年で8000億円の出版物売上が失われたのである。つまり96年の3分の1近くの売上が消えてしまったことになる。 欧米のみなら

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    asakura-t 2010/10/01
    「日本だけが特殊」なのは、日本がずっとデフレだってこともあるんじゃないのかなぁ。// 「雑誌」はコードがあるやつで、コミックが含まれるのね。他もそうなのかな。
  • 出版状況クロニクル28(2010年8月1日〜8月31日) - 出版・読書メモランダム

    出版状況クロニクル28(2010年8月1日〜8月31日) 記録的な今年の猛暑の中での7月売上高が公表されつつある。 スーパーは前年比1.2%減、百貨店も同1.4%減、コンビニは猛暑による飲料やアイスクリーム需要が伸び、14ヵ月ぶりにプラスとなる0.5%増だった。 それに対して、書店、古屋は猛暑のために大幅な客数減に見舞われているようだ。それを反映してか、7月の出版物販売金額は前年比書籍11.9%減、雑誌4.8%減で、トータルは7.7%マイナスに及んでいる。5月の同5.2%減、6月の5.3%減を超える数字で、猛暑が続いている8月も同様だと推測される。 加速する危機の中で、出版業界はどのような秋を迎えることになるのだろうか。 1.『日経MJ』(8/4)の「日卸売業調査」が発表された。そのうちの「書店・CD・ビデオ」を示す。「楽器」卸は省略した。 順位社名売上高 (百万円)伸び率(%) 営業

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    asakura-t 2010/09/01
  • 古本夜話48 通俗性欲書と南海書院 - 出版・読書メモランダム

    昭和初期円時代は同時に「艶」の時代だったと書いてきたが、それはまた性科学雑誌と性典ブームの時代でもあった。それを担ったのが既に記した澤田順次郎、羽太鋭治、田中香涯の三人で、かつて『彷書月刊』(二〇〇一年一月九日号)が「性科学の曙光」という特集を組んだ際に、彼らを「性欲三銃士」と呼ぶ提案が出されていた。しかしこの特集において、三人ともあまりにも多作ゆえか、彼らの著作を刊行した出版社についての言及はなかった。それらの出版社は有文堂書店、天下堂書房、平野書房、博愛堂、京文社書店、南海書院などで、南海書院は田中のを出していないようだが、澤田と羽太の二人のを刊行している。 手元にその南海書院の一冊がある。それは澤田の『性的能享楽の真相』で、昭和三年三月十七日初版、四月十七日二十版と奥付に記されている。巻末広告には「忽七拾版」の羽太の『性愛研究と初夜の知識』、これまた「忽ち第三十四版」の『現

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    asakura-t 2010/08/20
  • 出版状況クロニクル27(2010年7月1日〜7月31日) - 出版・読書メモランダム

    出版状況クロニクル27(2010年7月1日〜7月31日) まだ幸いにして大きな倒産は起きていないが、出版社、書店、古屋の売上は ほぼ最悪の状態になっている。 創業・開店以来、最悪だといういくつもの声すらも聞こえてくる。もちろんそれは取次も例外ではないはずだ。 そのような状況の中で夏休みを迎え、その後には多くの書店が決算を控えている。だから返品率は確実に上がるだろう。 かくしてまた秋から冬にかけて、出版業界はさらなる危機へと追いこまれていく。 1.『日経MJ』(7/14)に09年度「日の専門店調査」が発表された。そのうちの書店売上高ランキングを示す。 順位  会社名    売上高 (百万円)  伸び率 (%) 経常利益 (百万円)  店舗数 1紀伊國屋書店114,509▲4.463463 2丸善88,975▲7.2▲53844 3有隣堂53,754▲1.736343 4ジュンク堂書店44

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    asakura-t 2010/08/02
  • 出版状況クロニクル26(2010年6月1日〜6月30日) - 出版・読書メモランダム

    出版状況クロニクル26(2010年6月1日〜6月30日) この数ヵ月で近隣の書店が2店続けて閉店した。1店は地場の書店、もう1店は地方チェーン店で、両者とも郊外店ラッシュの80年代に開店している。大型店でない80年代型郊外店の時代が終わりつつあるのだろう。 老舗書店は1店が営業しているが、これは吸収合併によって移転した場所にあり、すでに別の書店と考えたほうがいい。かくして地場の書店は消えてしまい、残ったのはTSUTAYA、ブックオフ、ゲオだけということになる。これは全国的に共通する現象だと考えられる。 相変わらず電子書籍狂騒曲が続いている。だがその背後で、80年代型郊外店ビジネスモデルの終焉があるにしても、脅迫にも似た大政翼賛会的均一報道に将来を断念し、閉店廃業していく書店が増えているのではないだろうか。 その書店状況であるが、アルメディアによる5月1日時点での調査結果が公表された。それに

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    asakura-t 2010/07/16
  • 出版状況クロニクル25(2010年5月1日〜5月31日) - 出版・読書メモランダム

    出版状況クロニクル25(2010年5月1日〜5月31日) 今月の出版業界に関する報道はあきれるほどiPad電子書籍問題一色に染められ、それはまだ続いていくのだろう。 だがクロニクル24でも書いておいたように、これらの報道は現在の出版業界の危機の質を隠蔽、ミスリードしかねない狂騒曲と見なすべきだろう。 1989年の消費税導入に際し、ほとんどの商品が外税となった。出版業界は同じような狂騒の果てに、内税方式を採用するという失策を犯したことを忘れるべきではない。 この5月は経済不況、大型連休、天候不順も重なり、スーパーやコンビニは売上不振だった。書店も例外ではないはずだ。電子リーダー狂騒曲の背後で、出版危機はさらに深刻化し、今年上半期の終わりを迎えようとしている。それでも今月はいくつかの電子書籍をめぐる話から始めるしかないだろう。 1.『中央公論』6月号が特集「活字メディアが消える日」を組み

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    asakura-t 2010/07/16
  • 「プログラムノベルス」と「プログラムピクチャー」 - 出版・読書メモランダム

    八〇年代に創刊された「プログラムノベルス」が多くの作家たちを生み出したことを既述したが、大沢在昌はまさにその典型であろう。彼の長編第一作『標的走路』 は八〇年に双葉社ノベルス、第二作『ダブル・トラップ』 は八一年に太陽企画出版のサンノベルスから相次いで刊行され、実質的デビューを果たしている。そして八〇年代を通じて、若い書き手としての試行錯誤を繰り返しながら、各社のノベルスを舞台として作品を刊行し、九〇年代になってカッパノベルスの『新宿鮫』 でヒーローと物語の造型の成功に至ったと思われる。だから大沢もまた「プログラムノベルス」と併走してきた作家といえるだろう。 その中の一冊に『野獣駆けろ』 (講談社ノベルス)がある。「書下ろし都会派ハードボイルド」と銘打たれた作品だが、注目されることもなく、「プログラムノベルス」の凡庸な一冊と見なされ、それは現在でも変わっていないだろう。だが論じるにあたって

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    asakura-t 2010/07/16
    今だとライトノベルがこの位置になるのかな。
  • 古本夜話9 『あまとりあ』と高橋鉄 - 出版・読書メモランダム

    前回藤見郁の『地底の牢獄』があまとりあ社の「裏窓」叢書として刊行されたことを書いたが、実はあまとりあ社は『裏窓』の久保書店の別名で、この社名で『あまとりあ』を刊行していた。 『あまとりあ』は昭和二十六年から三十年にかけて刊行された「性風俗誌」で、戦後生まれの私たちの世代はリアルタイムで読んでいない。だが当時の読者たちには強烈な印象を残しているようだ。その一人である藤義一は『あまとりあ傑作選』(東京スポーツ新聞社出版局、昭和五十二年)なるA5判、四百五十ページに及ぶ大部の一冊を編み、「編集後記」において、「アマトリアは、わが青春時代の免罪符」で、単なる読者というよりも、「アマトリアの住人」だったと述べ、その魅力について、次のように書いている。 性に関するあらゆることが、一見、雑然としているようでいて、一貫した性解放の論理立ての上に展開されている雑誌であった。執筆陣も軟派から硬派までを網羅し

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    asakura-t 2010/07/16
  • 河村清一の『千二百円で出来る書籍雑誌店開業案内』 - 出版・読書メモランダム

    前々回の「倉長治と田中治男『踏んでもけっても』」で書名を挙げた、河村の『千二百円で出来る書籍雑誌店開業案内』は、柴野京子の『書棚と平台』の「購書空間の変容」の章で参照され、そこで示された書店のレイアウト平面図が転載されている。彼女はこのに関して、自分の「購書空間」論のための都合のいい部分しか言及しておらず、肝心なことにふれていないので、せっかくの機会だから、ここで記しておこう。 『千二百円で出来る書籍雑誌店開業案内』は昭和十一年に誠光堂から刊行されている。奥付裏の広告を見ると、「『商店界』主筆倉長治先生責任推奨 小資開業案内叢書」とあり、同書に加えて、菓子パン店、喫茶店、売薬化粧品店、婦人子供服店のが並んでいる。だから商業界ゼミを主宰した倉が、戦前からの年季の入った商店イデオローグだったことがわかる。 この誠光堂だが、社名からして、後の誠文堂新光社の小川菊松関係先と推定でき、彼

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    asakura-t 2010/07/16
  • 続『書棚と平台』を批評する 1 - 出版・読書メモランダム

    柴野京子の『書棚と平台』をめぐって、福嶋聡の「出版界をめぐる様々な状況と対応 話をややこしくしているもの」(『Journalism』9月号所収 )、箕輪成男の「メディアとしての出版流通論」(『出版ニュース』9月中旬号)が書かれ、同書に関する様々な肯定的「言説」が流通し始めている。それはこれからも続くだろう。 だからここでさらに踏みこんで批評しておかなければならない。なぜならば、彼女の著作を評価するばかりでなく、注意を促しておかないと、『書棚と平台』の「言説」は近年の出版史の事実を歪曲しているにもかかわらず、新しく登場してきたトーハン出身、東大大学院在籍中の女性研究者という経歴と肩書、及び日出版学会の全面的バックアップによって、あたかも真実であるかのように、カノンとして受容されかねないからだ。 そして同時に、前回私が書いたように「このは真の出版危機の在り処を一時的に別方向に導く危険性を孕

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    asakura-t 2010/07/16
  • 柴野京子の『書棚と平台』を批評する - 出版・読書メモランダム

    出版、新刊、旧刊、古に関するブログ「出版・読書メモランダム」を新しく開設しました。よろしければ、お出かけあれ。 今月上梓した拙著『古探究2』の中で、取次から見た同文館、取次としての北隆館、至誠堂、大東館を書き、また独歩社や金星堂における取次の位置や機能について論じたばかりだった。 ところが偶然ながら、時を同じくして、「出版流通というメディア」をサブタイトルに付した、柴野京子の『書棚と平台』(弘文堂)が刊行された。奇しくも拙著の初版印刷日と柴野著の初版発行日はともに8月15日となっている。 『書棚と平台』はかつて東販に在籍していた著者が研究者に転じ、その修士論文をベースにして刊行されたものであり、これまでの取次論の集大成にして、新しい出版研究の出現と評価することができよう。 だが同書は修論をベースにしていることもあり、タイトルのイメージとは異なる専門書で、記述は晦渋なために、的を射た紹介

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    asakura-t 2010/07/16