ラジオ番組の取材で地下の下水道に入ったら、不思議な音響に遭遇した。それがきっかけで、本書の著者トレヴァー・コックスは”音の驚異”のコレクターとなった。マンチェスターのソルフォード大学に勤務するコックス教授は、本来は室内音響学を専門としている。インドア派かと思いきや、世界各地から音に関する情報が寄せられると、自ら体験するために機材を抱えてフットワークも軽やかに現地へ赴く。 行き先は人工の建造物のこともあれば、自然の造形物のこともある。ふだんは建築音響学者として、理想的な音を生み出すために音を制御する方法を考えている著者が、”音の驚異”の収集家としては対照的に、音を征服するのではなく、驚異的な音に耳をゆだねる。あるときは世界最長の残響に包まれながら、そこへの道のりに思いを馳せて探検家の気分に浸る。またあるときは人の居住地から遠く離れた砂漠で、砂の歌声に胸を高鳴らせる。こんなふうに音を求めて、ス