ベッドは神の御業がなされる場所 こんな生活はおかしいと、はっきり自覚して育ったわけではなかった。ただ、幸せな時間が長続きしないのはわかっていた。 姉の自転車の後ろに乗ってインドの埃っぽい田舎道を駆け抜けたときのことは、今も忘れられない。あのときは幸せだった。自由だった。 「あれは純粋な記憶……」 言葉を慎重に選びながら、ベクシー・キャメロンはそう振り返る。 「私はカルトの子なんだと意識せずにいられたひとときなんです」 キャメロンはそれを「汚れのない思い出」と呼ぶ。 よく思い出すのは、南アフリカのヨハネスブルグでの一コマのような記憶だ。4歳のキャメロンは「ビヴァリーおばちゃん」と呼んでいた女性のベッドサイドのテーブルで、紙幣の山をいくつも見つけた。金とセックスが結びついた瞬間だった。 ベッドは神の御業がなされる場所だと、キャメロンは教えられて育った。あれはイエス・キリストに捧げるお金だと。