縄文やケルトといった古代の文化や宗教が多くのファンを惹きつけている。そして、縄文人は月や蛇を信仰した、かつては女神崇拝を基盤とする母系社会が存在したといったことが言われるが、なぜ何千年も前の文字を持たない人々の世界観や宗教観を語ることができるのか。そうした経験科学では解明できない古代へのアプローチ法を確立したのが、天才宗教学者ミルチャ・エリアーデだ。 岡本亮輔『宗教と日本人―葬式仏教からスピリチュアル文化まで』では、エリアーデの宗教シンボル論の功罪を検討し、その影響力は、遠藤周作や大江健三郎、澁澤龍彥など日本の文学者たちを経て、現在の古代ブームにまでいたっていることを論じる。 賛否をめぐる議論も含め、ミルチャ・エリアーデ(1907〜1986)が宗教研究に与えた影響は計り知れない。ルーマニアに生まれ、ブカレスト大学で高等教育を受けたエリアーデだが、在学中に数年間インドに留学し、第二次大戦中は