社会保障制度が整えられ、老後の不安が薄れたことが、子供を持とうとする意欲を低下させ、少子化を進めてしまったのではないか。そうした疑問は、誰しも抱くものだ。しかも、少子化は、支え手を減らして社会保障制度を掘り崩しかねないから、それを防ぐために、どうすべきかは、重要な問題となる。 これに数理的な分析を加えたのが、先頃、日経・経済図書文化賞を受賞した、山重慎二著「家族と社会の経済分析―日本社会の変容と政策的対応」である。この本の評価は、改めてするまでもない。賞のHPで松井彰彦先生が述べるとおり、「言葉や印象論で語られることが多かった壮大なピクチャーを緻密な理論で語った意義は大きい」というものだろう。 私も、大変、楽しませてもらったが、残念ながら、子供を持たないで済まそうとするインセンティブの大きさ、それは、すなわち、少子化を防ぐために必要な施策の大きさを示すことになるが、そこまでは書かれていない