PR誌『みすず』に連載中から愛読していた宮田昇さんの文章が『図書館に通う』という本にまとまった。「当世『公立無料貸本屋』事情」というサブタイトルがついている。 著者は私のちょうど十歳上。戦後まもなく就職した早川書房からタトル商会に移り、米軍占領下にはじまる混乱した著作権問題に素手でとりくみつづけた方である。そのあたりのことは私もすでに『翻訳権の戦後史』や『戦後「翻訳」風雲録』などの著書で知っていた。その出版界の大先達が、いまや私同様、ひとりの退職老人として公立図書館のヘビーユーザーと化していたとはね。 ほどなく消えてゆく身で、手持ちの本をこれ以上ふやしたくない。経済的な事情もまったくないわけではないらしい。退職老人の後輩としては、そうした著者のつぶやきの一つひとつが身にしみる。 仕事をやめた宮田さんは、暇にまかせて、じぶんの街の図書館で高村薫や宮部みゆきや桐野夏生の作品をまとめて読み、これ
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