資本主義が嫌いな人のための経済学 作者:ジョセフ・ヒース NTT出版社 Amazon 『資本主義が嫌いな人のための経済学』の第10章のテーマは「同一賃金」であり、「貧困に対策するためには最低賃金を上げなければいけない」や「男女の賃金格差を是正するためには、女性が多い仕事の賃金を上げなければいけない」といった、左派が提唱しがちな主張が批判されている。 また、この本から10年以上後に出版されたデビッド・グレーバーの『ブルシット・ジョブ』やマイケル・サンデルの『実力も運のうち』、それらの著者が論じているような「エッセンシャル・ワーカーの賃金を上げよ」論に対する批判としても成立する議論とみなせるだろう。 まず、ヒースは、右派の人々は市場は「自然的正義」という見方をとっていたことを指摘する。「競争市場でならば、稼ぎ手が組織にもたらす価値とまったく同等な賃金を各労働者に振り当てられると期待できた」(p