あたしはたぶん世界中の誰よりもうすしおのことを愛しているし、できることならうすしおになりたい。 それはたぶんうすしおの生き方、ちょっとカッコつけていうとうすしおの生存戦略にとてもあこがれているからなんだ。 うすしおっていうのはスタンダードになったがゆえにその存在がまさに絶対的なのだけれども、その絶対的存在になるためにとにかくあらゆる外的要因、たとえばコンソメとかカラムーチョとかチーズ味なんかに対して等距離を保つことにした。まわりにどんな味が現れても必ず他の味と比較して「うすいしお味」たろうとした。 絶対的存在になるためにあらゆる味から相対的であろうとしたんだ。それゆえその存在は他の味とカブることなくただただそこに「有る」ことができた。 武士の剣を受けても倒れないよう樹木はより巨木になろうとする。 だが何度も剣を受ければいつかは巨木も倒れる。しかし風に舞うはなびらは振り下ろされる剣のまわりを