多くの人がそうだと思うけれど、小学校の図書室には『ズッコケ三人組』シリーズの棚があった。図書室の一角を占める不動の大人気シリーズ。だからこそ、読む前はなんとなく「大人が薦める児童文学」の象徴みたいなイメージを勝手に持っていた。 その思い込みが根底から覆されたのは、私が高学年になって、最初の『ズッコケ』を手にした時だ。 忘れもしない、『ズッコケ文化祭事件』。当時からミステリが好きだったので、「事件」と名がついたその本を選んだのだと思う。 三人組のクラスが文化祭で劇をすることになり、自分が主役を演じたいハチベエは、町に住む作家に脚本を依頼する。数年前に児童文学の賞を取り、これまで一冊だけ本を出したことのある童話作家、新谷敬三氏に。依頼を受けた彼は、「仲良しきょうだいとトンカチ山の大魔王」という脚本を書く。ハチベエたち三人をモデルにした三兄弟が、魔王に攫われた母親を勇気と知恵で助け出す話だ。しか