ロシア軍の兵士たちは数週間前にこの町から逃げ去った。だが、その痕跡は至る所に残っていた。 ウクライナ東部、ハリコフの南方90キロにある川沿いの小さな町バラクレヤ。コンクリートの階段を下り、ロシア軍が慌ただしく放棄した司令部の地下室に入った。「司令部」と書かれた鉄製のドアの向こうは、湿った臭いのする地下壕だった。焼却炉には書類が押し込まれ、その一部は焦げていた。他の書類は床全体に散らばっていた。 花柄をあしらったノートに、氏名不詳の参謀将校が、兵士の漫画と、望郷の思いを書き残していた。91ページにわたる手書きのノートには、その他の情報も記録されていた。ロシア軍情報部隊の位置情報、司令官たちからの電話の記録、戦闘の推移や戦死者、破壊された装備の詳細な記録──。士気低下と軍紀の乱れに関する記述もあった。 地下壕からは、全部で数千ページに及ぶ文書が発見され、ロイターはそのうち1000ページ以上を閲