<研究の背景と経緯> 現在の情報技術を支える半導体エレクトロニクスでは、半導体の中を流れる電子が主な役割を担います。電流は半導体の中にあるたくさんの電子の流れです。外から電界をかけると電子の数が増減して、電流の流れやすさも変化します。このような現象は、電子がマイナスの電荷を持つという性質に起因するものです。一方で、電子は電荷以外にスピンという属性を持っています。スピンは、非常に微量の(量子力学的な)磁気モーメントです。ハードディスクから棒磁石に至るまで強磁性注1)材料では、大量の電子のスピンの向きが一方向に揃っているため、磁力の源の磁場を発生します。このように、電子には電荷とスピンという異なる物理的属性があり、エレクトロニクスや磁気工学で電荷とスピンを使い分けてきました。ところが、1つの電子に電荷もスピンもあるので、工夫次第で両方を一緒に活用することもできます。例えば、磁場をかけてスピンの