最初に話したいのは、メイラード反応という、科学の教科書に載っているような用語を、なぜ料理人が理解した方がいいのか、という話です。たとえば、「椅子のデザイン」という場合、デザインはどういうことか。椅子の本質的な意義を考えて、それをプロダクト(製品)化していく。椅子の目的は、座るっていうことですよね。「座る」とは、どういうことかを突き詰めて考えたら、こんな椅子もできますね、あんな椅子もできますね、という意義を本質的にとらえ、それをデザインしていく。料理にも、同じことがいえると思います。 料理人の皆さんは、風味のデザインをやっておられるのです。どんな素材を使って、どういう味付けをしていくか、意識的に、意図的に、こういうおいしいものができるのではないかと、考え、料理する。それが風味のデザインです。昔からやられていることをそのまま行なうだけではなく、その中に意義を見いだし、「おいしさ」とはどういう