大学で学んだ事を仕事に活かしているかと聞かれて、答えに詰まる人は多いと思う。高等教育を受けている人の生涯賃金が高い事は分かっているが、医療系専門職などを除けば大学教育が職能を高めているかは明確では無い。 名のある企業家に大学中退者は少なくない。文系どころか理系で研究開発に従事する人で学部の専門とは全く違う事をするケースも数多くある。プログラミングをしていると、大学の教育内容を使っていたりするので職能を高めそうな気はするが、大学に通っていなくても知識として習得できているのも確かである。 教育された専門知を直接活かす機会がない高等教育を受けた人々の賃金向上は、いかなる理由でもたらされているのであろうか。 1. 人的資本 vs 労働市場シグナリング 大きく分けて、二つの説明がある。一つは、教育された専門知を直接活かす機会がなくても、大学教育が職務遂行能力の向上をもたらしていると言う、人的資本仮説