「黄緑」や「青緑」という色はあるが,「赤緑」という色はない。人間の視覚は「黄色と緑」や「青と緑」は同時に感じることができるが,「赤と緑」はどちらか一方しか知覚できないからだ。「青と黄色」も同様で,「青黄色」という色はない。このように互いに拮抗する色を「反対色」と呼ぶ。 ところが最近,ある種の特殊な状況のもとでは反対色が混ざり合った「ありえない色」を見ることができることがわかった。人の眼は一点を見つめている時も小刻みに視線を動かしているが,これを強制的に固定し,隣り合わせに並べた色の領域が網膜上で静止するようにする。すると両者の境界が消え,2つの色が混ざりあう。2色の輝度が等しいと効果は強力で,反対色ですら混ざり合ってしまう。 これまで,人間の脳が拮抗の仕組みを乗り越え,反対色を同時に知覚することはないと考えられてきた。だが,拮抗の仕組みはもっと柔軟で,一時的に停止することもできるらしい。
![「ありえない色」を見る](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/0469bf07e40c49ac054dc338fdb4712e42d6e701/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fwww.nikkei-science.com%2Fwp-content%2Fuploads%2F2010%2F04%2F201005_064.jpg)