六世紀ごろに生きた中国の僧侶、慧皎は中国に仏教が伝来した一世紀から六世紀初頭にかけて、中国における仏教の普及と研究に貢献した偉いお坊さんんの伝記をまとめ上げている。それがこの『高僧伝』という書物。邦訳では全四巻。原本は十四巻になる大作。岩波文庫の一巻目はこのうち、天竺からやってきてありがたいお経や中国に持ち込み、その翻訳を行った僧侶たちについて書かれた「訳経篇」を収録。すでに全四巻の書評などもいくつか出ていて絶賛の嵐ですが、この訳業は本当にすごい仕事だと思いました。現在日本につたわっている様々な版からオリジナルに一番近い文を検討する、という試みはもちろん、とにかくリズミカルでなめらかな訳文が素晴らしい。仏教用語や中国の地名、人物についての注釈なども豊富でありがたいことこの上なし。偉いお坊さんの伝記であり、また慧皎以前に書かれた伝記の研究書でもあり、かつ仏教の教えを解説さえしてくれる本書の魅