東電原発事故に伴う風評問題が拡大・長期化した背景には、「事実に反した流言蜚語を広める」「明らかになっている知見を無視する」「すでに終わった議論を蒸し返す」「不適切な因果関係をほのめかす印象操作や不安の煽動」などを繰り返すことで、正確な情報の伝達妨害と誤解や偏見の既成事実化をはかった「風評加害」の存在がある。 前回では、ALPS処理水(以下処理水)が泥沼の社会問題化した要因にこれら「風評加害」があったこと、それら風評加害が続いた3つの理由と従来の「風評対策」が充分に功を奏しなかった原因、社会が「風評加害」を抑制どころか事実上のインセンティブを与え続けてきた現状について述べた。 風評が拡大・温存され続ける負の連鎖を断ち切るものは何か。誰が役割を担うべきか。 災害などの非常時に広まる流言に関する先行研究、たとえば米国人社会学者タモツ・シブタニ著“流言と社会”では、流言を防ぐ役割が「マスメディアや