コロナ・ウィルスが日本で猛威を振るい始めた二〇二〇年の三月初めに、この作品を書き始め、三年近くかけて完成させた。その間ほとんど外出することもなく、長期旅行をすることもなく、そのかなり異様な、緊張を強いられる環境下で、日々この小説をこつこつと書き続けていた。まるで〈夢読み〉が図書館で〈古い夢〉を読むみたいに。そのような状況は何かを意味するかもしれないし、何も意味しないかもしれない。しかしたぶん何かは意味しているはずだ。そのことを肌身で実感している。 村 上 春 樹
![村上春樹、6年ぶりの最新長編『街とその不確かな壁』特設サイト | 新潮社](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/7363723c8c174fed25a47908463cc98547d84a16/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fwww.shinchosha.co.jp%2Fspecial%2Fhm%2Fassets%2Fimg%2Fogp.jpg%3F20230301)
ホーム > 新潮文庫 > 新潮文庫メール アーカイブス > ある日の午後、平積みの文庫から1冊を手に取ったお客さんが、通りがかった書店員を呼び止めた 客 「店員さん! 何コレ。ひどいよこの本」 書店員「お客さま、いかがいたしました?」 客 「いかがも何も、コレ見てよ、コレ」 書店員「新潮文庫の『生者と死者』。泡坂妻夫さんによる空前絶後のミステリーですね」 客 「そりゃたしかに空前にして絶後だよ。小口側が幾つも袋とじになっちゃって、頁が開けないんだから」 書店員「ああ、ちゃんと、とじてますね」 客 「しかもこの1冊だけかと思ったら、他の本も全部とじてる。製本ミスってこんなに起こるものなの?」 書店員「これでいいんです、お客さま。『生者と死者』はとじていない方が製本ミスなのです」 客 「?????」 書店員「実は『生者と死者』は1冊で二度楽しめる作品なのです。袋とじされた状態では25
我々の棲む世界と、地図上にない異世界〈十二国〉とを舞台に繰り広げられる、壮大なファンタジー。 二つの世界は、「蝕」と呼ばれる現象によってのみ、行き来することができる。〈十二国〉では、天意を受けた霊獣である麒麟が王を見出し、「誓約」を交わして玉座に据える。選ばれし王が国を治め、麒麟がそれを輔佐する。しかし、〈道〉を誤れば、その命は失われる。気候、慣習、政治体制などが異なるそれぞれの国を舞台に、懸命に生きる市井の民、政変に翻弄される王、理想に燃える官史などが、丹念に綴られている壮大な物語である。
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