「もう、やめた方がいいですよ」 陸自隊員がひたすら水中捜索をするところに通りかかった警察官が、傍にいた防衛省職員に声をかけた。 水死したご遺体は、しばらく水面に浮かんだ後すぐに沈み、1週間ほどたつと炭酸ガスがたまって再浮上するが、やがてまた沈む。その後は浮かんでくることがない。すでに、その時期になっていたことから、見かねた警察官が忠告したのだ。 中隊長にそのことを告げると、「分かっているんです。分かってはいるんですが、どうしてもやめられないんです。合理的でないと言われれば反論はできません。でも、どうしても…。私の判断は間違っているんでしょうか?」と言う。 効果の上がらない作業に従事させることが是か非か。長い沈黙の後、 「そのまま作業を続けてください」と答えた。 ある学校を通りかかった小隊が、先生から「どうしても金庫に閉まった成績表を引き上げたいんです」と頼まれた。子供が行方不明のままの親御
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