※ 先日、『雷理さん』の記事を拝読し、ブクマコメントのやりとりから生まれた掌編です。 www.rairi.xyz 静かな水底で、ヒメマスとキングサーモン(和名:マスノスケ)が、朝のあいさつを交わしています。 「おはよう、ぼくの姫君。いい夢を見たかい?」 「おはよう、マスノスケさん。とても不思議な夢を見ていたの」 といって、ヒメマスは夢語りをはじめました。 △ ▲ △ ▲ △ 真澄(ますみ)姫は、誠実で思いやりのある人柄だったので、身近に仕える者たちからも深く愛されていました。 しかし、どれほど献身的な衛士でも、すきま風のように入りこんでくる、心ない陰口をくいとめことはできません。 「気の毒な姫……、父王そっくりの『さかな顔』ではないか」 「亡き母上の美貌を受け継がなかったとは、残念なことです」 含み笑い、目くばせ、ジョークに潜んだ毒──、素知らぬ顔で聞き流してはいても、姫君の心は、つきささ