両親とも東京の生まれだったので、「夏休みに泊まりがけで田舎に行ってきた」という友だちをうらやましく思っていました。 それでも一度だけ、叔母の配偶者(義理の叔父)の田舎へ連れて行ってもらったことがあります。 三世代同居の大きな家で、叔母夫婦と私の他にも親戚が来ていてにぎやかでした。 私にとっては、それまで会ったことのない人ばかりです。 年が近い子供もいたのですが、その子たちと遊ぶより、広い庭でひたすら自転車の練習をしていたことが記憶に残っています。ちょうど、補助輪を外して自転車に乗る時期だったのです。 夜になると、生まれて初めて、目がふさがれるような真っ暗闇というものを体験しました。 私たちが泊まった部屋は、長押に正装したご先祖さまの遺影が並ぶ和室で、蚊帳がつってあります。叔母が蚊帳に出入りするときの「作法」を教えてくれました。 蚊が中に入ってこないよう、まず、うちわであおいで追い払い、さら