●『データの見えざる手』(矢野和男)という本の、第一章だけ読んだのだけど、これは恐ろしい本だ。この本のイントロダクションには、「科学の進歩のきっかけの多くは、新たな計測データの取得から」というようなことが書かれているのだが、本文を読むと、この言葉が恐怖の感情と共に迫ってくる。先を読むのが怖い。 ●人間には、例えば、同じ計算のステップを延々十万回も繰り返す、ということを(「実験」として)行うのはとても困難だ。さらに、もし同じステップを十万回繰り返したとしたらその結果どうなるのか、ということを想像することも難しい。人間が考える因果関係や論理的展開は、そういう形での思考に対して無力だ。しかしこの世界は、実はそのような、無数の単調な繰り返しのなかで少しずつ「このようなもの」になってきたのだとしたら……。 でも、コンピュータによるシミュレーションは、いとも簡単にそれをやってのけ、そして驚くべき結果を