唐草模様があしらわれた2両連結の金色の車体は、午前9時46分、緩やかに大分駅のホームを離れた。 「100年の時を超え、蘇った幻の豪華列車」。それが幻ではなく現実となるまでには、こんな物語があった。 文・品川雅彦 写真・永田忠彦 Text by Masahiko Shinagawa Photographs by Tadahiko Nagata 1906年(明治39年)。当時の『九州鉄道』が、アメリカ・フィラデルフィアに本社を持つ鉄道車両メーカー『ブリル社』に、豪華客車を発注した。しかし、時を置かずに『九州鉄道』は国有化され、先の豪華客車も日本には納入されたものの一度も営業運転されることなく、東京は田町の操車場の片隅に留め置かれたままとなった。 そんなある時。鉄道をこよなく愛する原信太郎氏(故人・後に横浜に『原鉄道模型博物館』を開設した)は、幾度も操車場に足を運び、その絢爛たる列車をスケッチ