小林俊之さん(62歳)は、事件一筋30余年のベテラン記者だ。写真週刊誌全盛期のフライデーでの活躍で知られている。小林さんは事件記者の仕事を「酒でも飲まなきゃやってられない」と言うが、ただの酒飲みにも見える。そんな疑念を抱きつつインタビューした。果たして、殺人事件という究極の修羅場を取材し続けた男の、心の深部まで近づくことができたかどうか……。 * 結婚して西武線沿線に住むようになって、駅前のスナックで雇われマスターをやっていました。店にはヤクザも来るんだけど、俺はまだ若かったからバカにされてさ、神経がまいっちゃった。それで水商売をやめて堅気になろうと、町場の印刷所に入りました。仕事が終わると毎晩飲みに行って、モツ焼屋で週刊女性自身の記者の松崎博和さんと知り合ったんです。田中角栄を陰で支え“越山会の女王”と呼ばれた佐藤昭の取材の他、たくさんスクープを出した人です。すぐに意気投合して、銀座のク