2月中旬、山根光保子さん(41)は3人の幼い娘と一緒に自宅を出た。季節外れの陽気の中、久しぶりの散歩だ。 「ここは桜が咲くとすごくきれいなんだよ」、「図書館の学習室はよく使ったな」。昔の話を娘たちに伝えるのには、理由がある。 「どんどん消えていってしまうから」 地域は建物の解体が進み、景色が様変わりした。 福島県双葉町は、2011年3月の東京電力福島第1原発事故で全町避難を強いられ、人が11年以上住めなかった。町に暮らすのは100人ほどで、学校も小児科のある病院もない。それでも山根さんは戻ってきた。昔は「双葉を出たかった」という。県外で働いてもいた。考えはなぜ変わったのか。(共同通信=横上玲奈)
