自粛生活とテレワークが続いたある日、「あれ? 思うように声が出ない」と感じたことはないだろうか。リモート会議で「声が聞き取れない」と指摘されたことは? 多くの「音声障害」の患者を診療している山王病院東京ボイスセンター長の渡邊雄介さんは、「コロナ禍の今、声の不調を抱えている人が目立つ」と指摘する。(聞き手・梅崎正直) ――新型コロナウイルスの感染拡大は、声の健康にどんな影響を与えているのでしょうか。 2か月ほど前、中年の雑誌編集者の男性が受診に来られました。昨年の1回目の緊急事態宣言の後、ようやく、人に対面して取材ができるようになったが、「質問をしても聞き返されることが多くなった」と言うのです。取材がスムーズにいかず、大事なことを伝えるにも苦労しているということでした。 長い時間、声を出して取材をしたり、会話をしたりすることが少なかったため、声帯の筋肉が衰えていると考えられました。声帯は粘膜