日本の高度経済成長とともに急増し、サラリーマンの胃袋を満たしてきた「立ち食いそば」。手間ひまかかるそばを驚くべき安さで提供できるのはなぜか。ジャーナリストの鵜飼克郎氏がレポートする。 * * * 立ち食いそばには知られざる秘密がいくつかある。そのひとつが、そば粉の割合だ。 「割り粉(小麦粉などのつなぎ)もそばのうちというように、歯ごたえなどを考えれば小麦粉を2割混ぜた『二八そば』が一番うまいといわれている。ところが、格安の立ち食いそばには比率が正反対の『八二そば』が多く存在する」と都内の大手製麺業者が言うように、実は多くの立ち食いそば店では「そば粉」と「うどん粉」の逆転現象が起きている。 その理由は、両者の値段に大きな開きがあるからだ。そば粉の多くは輸入品で、相場は1kgあたり約450円(国産品は2倍)。小麦粉は半額以下の200円である。 「国の補助がある国産そば粉の価格はここ数年下がって