平安から鎌倉時代に活躍した歌人、藤原定家(1162~1241)の日記「明月記(めいげつき)」に記された天文学的に貴重な情報の部分は、自身の記述ではなく、陰陽師(おんみょうじ=天文博士)に調べさせた報告文をそのまま張った可能性が高いと天文学者が指摘している。陰陽師の元の資料は見つかっておらず、定家の「切り張り」のおかげで記録の紛失が免れたようだ。 明月記には、寿命が尽きた星が最後に起こす大爆発「超新星」について、定家の生まれる前に現れた3個が記されている。現れた日付と正確な位置がわかるため、超新星の仕組みなどを知る天文学上の貴重な手がかりになっている。 小山勝二・京都大名誉教授(X線天文学)は、超新星の情報がある1230年11月の部分を詳しく調べた。そのころに彗星(すいせい)が現れ、台風や凶作や政情不安などとの関連を気にした定家は、陰陽師の安倍泰俊に過去の事例を問い合わせたとあった。その次の