江川 未解決に終わった國松孝次警察庁長官狙撃事件について、私たちの知りたかったことが、この本には全部書いてあります。犯行を自供している中村泰(ひろし)という老人が真犯人だという報道は以前から一部でありましたが、直に中村の取り調べを担当した原さんの記録ですから、実に具体的で決定的です。裏付けもほぼ取れたのに、なぜ立件できなかったのか。なぜ公安部がオウム真理教犯行説にこだわり続けたのか。その経緯がよくわかりました。 原 私は警察官人生36年半のうち多くの年月においてオウム事件と警察庁長官狙撃事件に携わりました。平成7年の地下鉄サリン事件と麻原彰晃逮捕から、平成24年に最後の特別手配犯を逮捕するまでかかわった。そんな捜査員は、たぶん私しかいないと思います。 江川 オウム裁判はこの1月にすべて終わって、3月には死刑囚13人のうち7人が、東京拘置所から地方の拘置所へ移送されましたね。 原 執行が現実