トマス・ピンチョン東京行きはフィクションです: 偶然の仲間柴田元幸先生訳の『メイスン＆ディクスン』で「ピンチョン全小説」の刊行が始まったことで、どっとピンチョンファンが増えたような気がする今日この頃。きっとピンチョンのことをネットで調べる人も増えているのでしょう。ごくたまに、山形浩生さんが１９９３年のムック（トーキングヘッズ叢書 4 『ピンチョンで大いに遊ぼう』1993年12月）に書いていた記事「トマス・ピンチョン東京行き」（要するにお忍びで日本に来たピンチョンに山形さんが会ったという話）が本当の話だと思っているらしき文章をネットで見かけるようになりました。約二十年前にこの文章を読んでいたカルト的な読者はこの明らかな冗談を笑って読んだわけですが、現在これを信じる人がいるというのも、山形さんのカリスマ性とピンチョンさんのハテナ性とによるのでしょう。それにしても、今読んでも面白い文章ですね。出てくる「ピンチョン」さんは、あまり本人っぽくなくて、やっぱ
