世界的にも希有な起業家・投資家はどのような思想をもち、社会に影響を与えているのか。気鋭の哲学者、関西学院大学准教授・柳澤田実が読み解く。 決済システムPayPalを創業し、現在は、先駆的なビッグデータ解析企業パランティアを率いて巨万の富を築くピーター・ティール。メディアに登場する彼の像は、ポジティブなものとネガティブなものとに二分される。一方にあるのは、天才的な起業家にして投資家、医療や教育のために多額の寄付をするフィランソロピストという、光り輝くティールの姿である。 他方で、彼は冷酷なヴィラン(悪役)でもある。民主党(リベラル政党)支持者が多いシリコンバレーにあって逆張りをする共和党(保守政党)支持者。個人年金制度を極限まで活用して5000億円以上蓄財した金の亡者。左派の政治運動を敵視して極右勢力に資金援助を行い、2016年のアメリカ大統領選挙ではドナルド・トランプを推薦した人物。この光
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