LPレコードにゆっくりと針を落とし、歌詞カードの一語一句を指でなぞりながら目に焼き付ける──。 思えば、かつては音楽の聴き方としてこれが普通だった。当時、中学生だった筆者は、そうやってサイモン&ガーファンクルの曲から米国の若者が内包する苦悩の一旦を垣間見、キング・クリムゾンが紡ぎだす音と言葉の波動から、ファンタジーと不条理の世界に浸かる歓びを覚えた。そして今、ダウンロードや定額制の音楽配信が聴取行動の中心になり、悲しいことにそんな音楽の聴き方から遠ざかって久しい。 リリック・スピーカーは、レコード時代にあった音楽とのふれ合い方の原点を思い出させてくれる(写真1)。ベンチャーのSIXが開発したこの“新しくて古い”装置は、スマートフォンで音楽を再生すると歌詞を透過型のスクリーンに表示するものだ。ただし、カラオケのような単純なライン表示ではない。躍動的にビジュアライズされた歌詞が楽曲の進行にシン
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