『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』(小林昌平著、文響社)の冒頭で、著者はひとつの指摘をしています。紀元前に生きた人も、現代人と同じようなことを望み、同じようなことで悩んでいたのだと。いわば人間は、いつの時代も同じ悩みのまわりを回り続けているのだということなのかもしれません。 人類が3000年も前からいまと同じような悩みを抱えていたのだとしたら、それは同じだけの長い年月をかけ、数多くの賢人がそれらを克服しようと考えてきたということでもあるはず。そして、そのなかでも真剣に悩みと格闘し、もがき苦しんで答えを出そうとしてきたのが、哲学者や思想家と呼ばれる、思考そのものを生業とする人たち。 紀元前528年、釈迦はこの世が生老病死の苦しみの世界であることに悩み、王子という恵まれた家庭環境を捨てて出家、やがて菩提樹の下で悟りを開きます。弟子の女性が幼い息子の死に半狂乱するのを見て、「愛する家