■「助走」を見せることでワクワクさせられないか? 塩田 今日対談するにあたって、先生の年表を確認させていただいたんですが、一番びっくりしたのが、あの『文学部唯野教授』と、あの『残像に口紅を』を、同じ時期に連載されていたことなんです。どちらか一つを書くにしても、僕からしたら気が遠くなるような作品なのに、超人的すぎます。 筒井『罪の声』の後に出したのが、『騙し絵の牙』ですよね? 明らかに、今回のほうが進歩している。肩の力が抜けているよね。この書き方で、どんどんやっていけばいいんじゃないかな。 塩田『罪の声』の時は、編集者からの脅迫もあったんです。「あんた、これが売れんかったら危ないで」と(笑)。確かに、21歳の時に着想して15年間温めていたネタなので、これがダメだったらもう自分には打つ手がない。そういった緊張感が出ている作品なのかなと思います。『騙し絵の牙』を書いている時は、心境がまったく違い
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